~トラウトとは~
トラウトフィッシング。この名前を聞いたことがあるアングラーは多いだろう。トラウトとは一般的には淡水域で釣れるサケ科の魚を指し、日本国内で釣れるトラウトは全20種以上に昇る。現在は養殖技術の発達によりトラウトの品種改良や交配が容易になり一般には三倍体と呼ばれるトラウトも多く見られる様になった。トラウトフィッシングは大きくわけるとエリア。ネイティブと分かれ、エリアは管理釣り場。ネイティブは自然河川や湖沼と言った形になる。各地域の山間河川や山岳渓流、湖沼に生息し、漁協管轄下の河川、湖沼ではニジマスやヤマメ、三倍体ニジマスの放流に力を入れている漁協も多い。またエリアトラウトと言った管理釣り場では、一般には幻とされるイトウや大型イワナ等を手軽に釣ることが出来る。様々な場所でターゲットとなる魚のため地域独自の釣り方や現在の主力釣方であるルアーフィッシングやフライフィッシング。餌釣りならのべ竿による本流釣りや渓流釣り、またテンカラなどで狙う事が出来る。
しかしながら、トラウトを釣るには遊魚券を買い求める必要が殆どであり値段は1日800~3000円程する。管轄の厳しいポイントではタックルにもレギュレーション(釣り場のマナーやルールの事)が敷かれバーブレスフックが必須だったり、キャッチアンドリリースが前提の釣り場も少なくない。事前に自分が釣りに行く場所がどのような所なのか事前に把握する事が必須事項である。
エリアではさらに細かくレギュレーションが決められておりそれに従って釣りをする必要がある。
~習性・釣り方~
本流河川及び渓流河川のメインターゲットとなるのはヤマメとイワナ、ニジマスでそれらは難易度の高い魚と知られている。比較的にヤマメ、ニジマスは下流部にイワナは中流から源流域まで生息しており、美しい容姿に魅了される釣り人も少なくない。
大きな河川では海からの遡上魚や、河川を行き来する内に大型化したサクラマスや本流ヤマメも狙う事が出来る。
現在では漁協の稚魚放流及び成魚放流が盛んに行われているため比較的釣りやすくなっており、ニジマスに至っては通年を通して狙える河川も多く存在する。
渓流ではその川幅と流域面積の小ささから容易に魚がスレてしまったり、釣られて個体数そのものもあっという間に減ってしまう。そのため落ち込みや大石回り、小淵等は魚がたまりやすいポイントとして知られているがスレた魚が多く非常に釣りづらい。また渓流の織り成す複雑な流れは水深のある落ち込みや淵でやより複雑かつ障害物も増えるので釣りづらくなる傾向がある。一発大物狙いとなれば上記の様な場所を狙う必要があるが、コンスタトに釣果を出すには違うアプローチをかける必要があるだろう。
本流では川幅も大きくなり水量も増すためポイントも多くなる。小型は様々な場所に居るが大型は大淵や流芯の中に居る事が殆どでアプローチを掛けづらいのが実情である。
本流河川もしくは渓流河川でトラウトを狙うにはミノーを使うのが一般的で簡単に釣れる。ヘビーシンキングミノーと言われる類いのルアーは流れの早い水中で簡単にアクションを与えやすく底から水面下を意識している魚に長時間に渡ってアピールしやすい。トラウトの好奇心や攻撃性をくすぐるらしく突然ひったくった様なバイトをしてくる。これをリアクションバイトと呼び、トラウトの習性を使った釣り方である。
しかしリアクションバイトは案外スレやすく同じ系統のミノーでは人の多い釣り場では釣果が出しづらい。その際はスプーンやスピナーと言ったルアーに変更し魚にコンストなアピールを与えるのが釣果を伸ばす秘訣である。
湖沼でのメインターゲットとなるのはニジマス、ヤマメ、イワナ、サクラマス、ブラウントラウト、レイクトラウト等であり、河川に比べて大型化している個体も少なくない。
湖沼ではカケアガリから浅場に居着くか回遊している個体が多く、水深にして1~15メートル程の場所が多い。カケアガリや湖への流れ込み等の水が動く場所、倒木回りゴロタ岩が多く沈む場所など地形に変化が多い場所を好む。
日の出前から日の出1時間前後は沖に居る大型魚も手前のカケアガリか、沖でも水深2~5メートル程の浅場に餌を追って回遊し、日が出てくると水深の深い場所に群れごと移動する傾向がある
群れの数は20~100近い群れもあれば2、3匹で移動するはぐれ鱒も存在する。
湖ではアングラーがウェーディングで湖に立ち込む姿が良く見られるが、朝マズメ1番にウェーディングでの立ち込みを行うのは朝、活性が良く活発にルアーを追う魚を追い飛ばす行為であるため出来る限り避けたい。
先ずは水に入らず陸からアプローチをかけ徐々に入水をするのが鉄則と言えるだろう。
トラウトはどの場面でも人の足音や水面への波紋、ルアーの着水音に敏感であるため、出来る限り場を荒らさない様にするのが必要である。
~タックル~
概説で述べた様に対トラウトタックルは多岐に及び、もはや全てを把握するのは不可能と言って等しい。そのためここでのタックルの説明はごく簡単かつポピュラーな物で参考の一つ程度と考えて欲しい。
ルアーフィッシングはトラウトフィッシングで最もポピュラーな釣りの一つ。激しい攻撃性や好奇心を持つトラウトに対しては非常に面白い釣りが出来る。
ロッドは8~11ft程の物を使うが山間部では取り回しを考えて6~8feet程の竿を使う場合が多い。
ネイティブトラウト専用のロッドも各メーカーから多く出ているが柔らか目(胴調子)のシーバスロッドやショアジギングロッドでもカバー出来る。トラウトロッドはミノー等のルアーをティップで操作しマス類の軽く強い引きをいなすためにシーバスロッドやジギングロッドと比べると穂先が硬く胴が柔らかい物が多い。簡単にシーバスロッドと比べればトラウトロッドの方が柔らかく弱いと言った印象だろう。しかし湖沼で10g以上のスプーンやジグをフル遠投する場合もあるので必要に応じて個人で臨機応変かつ柔軟な対応が必要となる。私が知る限りでは堤防サビキ用のロッドでルアーフィッシングをやる人もいる程なので正に個人の自由と言えるだろう。
リールはスピニング2000~3500程、ベイトリールはアンバサダー5000c位の大きさがあれば大抵の釣り場で必要十分と言える。1日振り回すので個人の体力に合わせると良い。ドラグは柔らか目なセッティングが好ましく、私は目安とし500㎜ペットボトルをぶら下げたらちょっとずつドラグが出ていく位のセッティングにしている。
ラインシステム
一昔前は4~9ポンド程のナイロンラインを目一杯巻いていたが今ではPEラインの普及により2~4ポンド程の物が使えるようになり100m遠投が可能になった。
ポイントに応じてラインシステムは大きく異なるためここでの詳しい説明は控えさせて貰うが、これも個人の好きな面も多く自分独自のラインシステムを作るのもまた一興だろう。
ルアーの種類については個人の好き。これに尽きる。
スプーン。ミノー。クランク。スピナーなど無数の種類があるため様々な物を試して欲しい。
~オススメの釣り方~
筆者の地元では家から5分で利根川と言う事もあり本流釣りが盛んである。ここでは私がトラウトと対峙する上で最も楽しめる釣り方を紹介したい。それは本流域におけるのべ竿での一本釣りである。放流されている個体も多いが多くは釣れ残り野生化する。激流域を生き抜いた魚は我々の想像を絶する程のパワーと数々の仕掛けやルアーを掻い潜る賢さを持ち、我々釣り人を翻弄する。
近年ではサクラマスの遡上や大型河川でスモルト化し銀化したヤマメ(通称利根マス)や戻りヤマメが狙える上にヤマメの稚魚放流も多くされているので魚影も濃い。
ダムや台風の関係上、年間を通しても狙えるタイミングは少なく決して簡単な釣りとは言い難が、日本一の流域面積を誇る川での本流のべ竿釣りを是非体感して欲しい。
~タックル~
ロッド
本流竿では最低7メートル必要で9メートル程必要になってくる場合も多い。なにしろ利根川はその広大な水量のためポイントも広く十分に探るには長い竿が必要となる。また掛かると想像を凌駕するファイトを魅せるので長竿でなければいなし切らず、タックルの破損に繋がる。個人の体力に合わせるのが1番だが一つ長めと言った竿が良いと私は感じる。
釣り餌
大型個体はヤマメ、ハヤ、アユ等も好むがそれ以上に羽虫や川虫を食べている。私の経験上では春先はミミズやブドウ虫が何気に好調で桜が散ってからの初夏はもっぱら川虫である。キンパクやオニチョロの実績は高いが塩焼きサイズのヤマメはヒラタを餌にするとコンスタントに釣れる。知らず知らずに釣り人にないがしろにされるクロカワムシ(こちらの方言ではクロンボ)でも何気に実績があり魚の胃の中ではかなりクロカワムシを食べているので悪くはない餌。
羽虫は夜や早朝、カゲロウの成虫を取り集めた物を使う。非常に手間で使いにくいエサだが食いは良く実績が残せる餌。
仕掛け
私は通し仕掛けよりミチイトとハリスを分断した仕掛けを愛用しており、ミチイトナイロン1.5号から1.2号。ハリスはフロロ1号を使っている。
一般には3号通し位が普通とも言われているため、非常に細仕掛けだが、普段釣りをしていると魚が仕掛けを見切ると感じる節が幾つもあるため出来る限り違和感を与えず魚を取れる限界の細さにしてある。ヤマメのみならハリス0.4号位がベストだが思いがけない大物が掛かる事もあるので注意したい。
ハリスの長さは30~50㎝程取っており、長い方が自然に仕掛けを流せる。しかし複雑に流れる中では長いハリスはトラブルの元ともなるので実際に釣りをしながら調節するのがベストである。
オモリは何気にこの釣りの肝と言っても良く、ポイントでの調節が必須。重ければ自然に仕掛けが流れず根掛かり多発で釣りにならず仕掛けを流しても魚が全く食ってこない事態となる。
釣り針について私は湖でも渓流でも本流でも例え20㎝のヤマメを狙う時でも80㎝のレインボーを狙う時でもいつ何時でも、がまかつ 渓流7号を愛用している。無数のテストの末に1番に掛が良く単純に最も釣れた針がこれだからだ。大きな餌を使う時には使いづらいがこの針があれば大抵は問題ない。
目印
目印はお好みで。仕掛けを見失わなければさほどに気にする程の物では無いと思っている。
~ポイント~
利根川本流はその広大な水量上にどこをどう探ったら良いのか分からない人も多いだろう。しかし分説での説明には限界もあり悩める釣り師の参考程度になれば幸いである。
利根川はガンガン、早瀬、ヒラキ、大淵、トロ場 、チャラ瀬が無数に点在しそれら全てに人の何倍も有ろうかと言う大石や大岩をゴロゴロと並べたアングラー垂涎のポイントが幾つもある。ケースバイケースの例外も多くあるが紹介したいポイントに的を絞って紹介しよう。
チャラ瀬・ヒラキ瀬
意外と釣り師が無視しがちなポイント。衝撃かも知れないがここには高活性のヤマメが多く付いている場合が多い。ヤマメは意外にも本流芯より岸際を好む傾向がある様でこの場合大抵サイズは20㎝前後と小型が多いが魚の顔が見たければ決して無視できないオススメのポイントである。
ガンガン瀬
一般にガンガンと呼ばれ仕掛けが全く取り付かず釣りにならないポイントの一つ。そんな感じに思われているかも知れないが、減水期に化けるポイントの一つでこの流れに着く魚は基本高活性で釣りやすくトンでもなく引く化け物である場合が多い。
大淵・トロ場
本流釣りを語るに欠かせないポイント。メインポイントとなる場合もあるが水深3メートル余りで大きく水中で流れが歪む様に流れる大淵は攻めるに攻めきらず歯がゆい思いをするアングラーも多いだろう。しかし、魚が入っている事は間違いなく活性が上がったりマズメ等には浅いトロ場や流れの頭に出てくる事も多い。また遡上の体力温存の為に淵を使う魚も多く大淵と淵に流れ込むガンガンや瀬はセットのポイントと考えると非常に攻略しやすくなる。大型が掛かってもその立体的な広さ故にファイトがしやすく大物が取りやすいポイント。
大石周り
こちらも攻略には欠かせないポイントの一つ。様々な場所に乱立している大石は複雑な水の流れや深みを作り出し多くの魚が居着くポイントとなる。大石回りを縄張りもしている個体も多くシーズンを通して狙えるポイントである。
~シーズン~
シーズン開始は5月のゴールデンウィーク明けから6月上旬位で雪代がある程度収まる頃がベストシーズンである。
雪代がある時は平水時から20倍程に水量があり釣行に危険が伴う所があるので注意が必要。戻りヤマメやサクラマスの遡上は6月中旬頃が多く見られ坂東大橋の堰堤では大量のサクラマスや戻りヤマメが遡上しているのが見られる。
前述でも少し述べているがヤマメはチャラ瀬やヒラキ等の浅瀬にも多く居着き大型は大淵や流量のあるヒラキに居着が、40㎝前後のヤマメや野生化したニジマスは雪代がある時期は流芯に居着くため釣りづらい。雪代が無くなって1~2週間程が最大の狙い目である。
しかし毎年ダムの放水や降雪量の差で雪代が収まるタイミングを見極めるのは難しく情報のこまめなチェックが必要である。最寄りの釣具屋や鮎のオトリ屋に連絡するのもアリだろう。
ざっくり単純にヤマメ狙いなら春から初夏。秋口も好調で禁漁前まで良い成果が期待できる。夏至近くの夏場は日が落ちてからの19時~20時位にも釣れる実績があり、朝方4時頃もかなり良い。真夏は減水し渇水状態になるため昼間の釣りは釣りづらくなるが夕立の後の1時間前後はかなり実績がある。しかし利根川は雨が降ったら必ずしも活性が上がると言う訳ではなく雨が降った日から途端に魚の影すら見えなくなる事もある。
ニジマスは年間を通して狙える他冬季釣り場の釣り物としても放流されており、オールシーズン狙える魚である。
~ターゲット~
ヤマメ・戻りヤマメ
利根川では良型のヤマメが年間を通して釣り上がっており、その遡上量や魚影は年々増えている傾向がある。今では40㎝から時には伝説クラスの60㎝程の個体も確認できその可能性は未知数と言えるだろう。一般にも大型はその警戒心のため淵や流れに厚みがある比較的緩やかな場所に定位し、補食の為に希に瀬や浅場に出てくる。利根川の魚はその豊富な水量故に他の小中河川の魚と比べると流れを武器にする事に長けており想像を絶するパワーとスタミナを持ち合わせる。たとえ渇水期で水量が落ちていても油断は大敵である。
ニジマス
ニジマスはここ最近に放流に力が入っており年間を通して狙うことが出来る。正直冬季釣り場に放流されるニジマスはさほど面白くないが、これらが釣り残り野生化すると他のマスには無いスーパーゲームを楽しむことが出来る。激芯に慣れたニジマスのヒレは扇子の如く巨大に強靭に生まれ変わり釣り人を翻弄する。またスタミナも他の釣り場の魚とは比にならない。掛かったら数十分時には一時間近い戦いを覚悟する必要があるだろう。
~あとがき~
トラウトフィッシングは現在多くの釣り人に愛される釣りとなっている。しかし非常に残念な事に釣り人同士のいざこざが多く見られる釣りの一つでもある。全ての釣りにおいて「誰の釣りが優れ、誰の釣りが劣る」と言う事は決して無い。
折角遠方から来ても餌釣りの場所取りが酷くて釣りにならないと嘆くルアーマンも居る。
自分の釣り座のすぐ隣に入り込みルアーを投げるので釣りにならないと嘆く餌釣り師も居る。
風下に入られたり自分の回りに人が寄る事でロッドを振れないと嘆くフライマンも居る。
これでは皆気持ち良く釣りをする事は決して出来ない。近年ゴミ拾いを釣りのイベントとしてやったりキャッチ&リリースの普及に伴い自然を思いやる人も多くなっている。
そんな中一つ人を思いやる心を持つ事。人の釣りを理解し、一歩引いて他人の釣りを思いやる事が必要不可欠だと私は思う。
いつまでもトラウトフィッシングが続いて欲しい。その時代を作るのは紛れもなく私達なのだ。