2か月間アオウオを追い求めた釣行記録
昨年、初めてのアオウオを手にした。
感動し足が震え涙が流れた。
長年追い求めた夢が叶った瞬間であり、これでようやくこの釣りにピリオドを打つことができた。
そう思ってから約10か月が経過した2019年1月。
やっぱりどうしてもまた会いたくなった。
一度考え始めると気持ちは大きくなるばかりで歯止めはきかず、気が付いたら利根川の水深図とGoogle Earthとの睨めっこになっていた。
水深図で地形と水深でポイントに目星をつけてGoogle Earthで釣り場の環境を調べ、ひたすらメモに取る。そんなことを繰り返しているとある考えが頭に浮かんだ。
「春シーズン全てを利根川へ捧ぐ」
私の釣り物は春と秋に盛期を迎えるものがほとんどでその半分をこの魚に費やすことは年間の釣果にも大きく影響するが、やはり中途半端では会えない魚。
私に一切の迷いは無かった。
水温10度、3月をシーズンインのスタートと考え、3月1週目は土日をフルに使って目星をつけたポイントをひたすら回り、釣り場までのアクセスや実際の地形把握に費やし、実釣は3月2週目から4月27日、28日の土日を最終日とした。
以下は毎週土日に通った記録をダイジェスト風に記載していく。
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3月2日-3月3日
初めてのアオを手にしてから約1年。利根川へ帰ってきたという思いが浮かぶ。
今回はポイント探しで翌週からの実釣に向けて調べてきたポイントをひたすらに回り、車の停められる箇所や水辺までのアクセス、竿を出す場所や地形、水深を一つずつ確認していく。
実際に回っていくと調べてきたポイントの約半分は、刈り切れないほどの葦やイバラ、水深が浅い、水辺に出れないなどで釣りが出来ないポイントであった。
夜は暇なのでアメリカナマズ狙いで竿は出しておくが、数回のアタリだけで釣れることは無かった。
朝起きると雨が降っていた。
そんなことはお構いなしで仕掛けを上げてまたポイント探索へ。
残りの数か所を回り帰路についた。
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3月9日-3月10日
本日から実釣である。
金曜日の深夜3時に到着しポイントは担ぎ込みでキャリーワゴンで荷物を運び車から片道20分。
土手上から土手下に荷物を降ろしそこからまたキャリーワゴンで5分ほど進む。
水門があり水質の違う水が合流していて小場所だが魚は多い。
水深は足元から5mほどはヒザ下程度。その先で一気に5mほどまで落ちている。
なんとか草を刈り、テントと荷物スペースを確保し竿を出した。
餌は3本ともタニシ。アオウオ釣りの定番の餌である。
早朝にセットしコマセのタニシを撒いたら翌日の朝まで一切仕掛けを動かさない非常に暇な釣りである。
アタリは竿につけたセンサーが手元受信機にアタリを知らせる。
竿のセットが完了したのが7時を回っておりテントでゆっくり休む。
そしてそのまま何事も起こらず日が暮れ眠りについた。
深夜3時過ぎ
突然のセンサー音と一気に糸が出るクリック音で目が覚める。
しかしクリック音は一瞬で止まってしまい魚は掛からなかった。
アタリ方からしても大型の鯉のようである。
そのアタリを最後に夕方の撤収時間まで竿は微動だにせず。
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3月16日-3月17日
今回は夕方から友人のヌマさんが合流した。
是非ともアオウオを見てみたい、写真を撮りたいとのことで同行してもらった。
ポイントは担ぎ込みで15分。
土手から下るときに無理をしたせいでキャリーワゴンが破損。
タイヤの足が折れてしまい走行不能に...
ヌマさんいなかったら帰りに大変なことになるところだった。
今回のポイントはそこだけ一気に深くなっており水深は5.5mほど。
枯れ葦とイバラが濃く草刈りをしながら服がボロボロになってしまった。
夕方には激しく雨が降る。
荷物もすべて凍りつく氷点下の中、テントの中で寝袋にくるまって眠る。
16日AM、アオが沖で抜ける。(抜けるとは顔や背中などの身体の一部を水面にこと)
大きさはわからなかったが巨大な尾ヒロをはためかして沈んでいった。
初めてのアオウオに唖然とするヌマ氏。
やはり初めて目にした時の衝撃は大きい。そして感動する。
私のこの魚への情熱を理解してくれる数少ない友人でそれをわかっているからということでヌマ氏はナマズ狙いの竿しか出していなかったが恐らく見てみたい魚から釣ってみたい魚に変わった瞬間だろう。
無情にも時間だけが過ぎてゆきアタリなく竿を畳んだ。
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3月23日-3月24日
この日は風邪を引いていてまだ熱もある状態であったが自宅で安静という選択肢はなく利根川へ向かう。
今回のポイントは私の下調べしたポイントの中では最下流のポイント。
水深2.5mほどで下流側がキツいテトラ帯、右側はフラットで岸から5mまで水深が膝くらいでその先で一気に落ちている。
私はテトラ側に竿を3本出し1本をテトラ帯の中へ打ち込む。イメージはテトラ帯の先数10cm以内に仕掛けを落とした。
その他2本はカケアガリの下とその先5mほどへセット。
夕方には延べ竿を出してレンギョを狙う。
カケアガリの先へ打つためにウェーダーで立ちこんで竿を振ると80cmほどの元気なレンギョが遊んでくれた。
22日の夜には昨年初めてのアオウオをゲットした関さんが合流。
朝には上がらないといけないとのことで短時間での参加となった。
夜はテントにて寒さに耐えるも夜中に限界がきて朝方まで車での待機とした。
薄明るくなる早朝5時にいつも通り仕掛けを打返しコマセを撒いてテントで再度就寝。
起きると関さんは帰ったようだった(ごめんなさい爆睡してました)
11時ごろ突然正面から強風が吹き始め水面を波立たせた。
完全向かい風で岸際の浅瀬は泥が巻き上がり一気に濁る。そしてテトラ際に入れた仕掛けの位置で濁りとクリアの境目が発生した。
直感的なものを感じ普段は追加しないコマセをその竿だけに残り全てを撒いた。
更に風が強くなりテントは潰れ、ヌマさんの声(イビキ)すら聞こえない状態になってきてしまった。
そしてお昼を回った1時前。
更に勢いを増した風にセンサーが入ってしまった。
熱でしんどい身体にムチを打ってしょうがなくセンサーをオフにしにいくとテトラ際の竿の異常に気付いた。
竿が上流を向き、糸は残り50mほど。
慌てて糸を回収すると魚はついている!
一番離れた竿に絡んでしまい引っ張ると糸が出ていきその音にヌマさんも起きてきた。
足元まですんなり寄ってきたので鯉かと思い一気に浮かせると漆黒の頭が浮く。そして巨大な尾ビレの一撃で潜っていく。
まさかのアオウオのヒットにウェーダーの準備もなくタモも近くにない。
ヌマさんにタモを持ってきてもらうが今度は絡んだ仕掛けのせいで寄せられない。
なんとか強引に寄せられるところまで寄せるもタモの長さが僅かに足りず届かない。
そんな状況を理解したヌマさんは躊躇うことなく入水しタモに納めてくれた。
風邪のことなど忘れ叫ぶ
「獲ったー!!」
サイズはそんなでも無かったがやはり会えることが嬉しい。
125cmくらい?
風邪だったことなんて忘れていたけど写真を見るとやっぱりちょっとしんどそう(笑)
ささっと検量と写真撮影を済ませてリリース。
元気に戻っていった姿を見て少し涙がこぼれた。
30分ほど余韻に浸ったが、風も強くテントも潰れており、続行不可能として竿を畳んだ。
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3月30日-3月31日
今回は少し上流へ移動。
ヘラ師の多いポイントで手前から7mで一気に落ちて水深3.5mほど。
そのカケアガリに仕掛けを置いた。
前回のアオを見てしまったヌマさんは今回からどうしても釣りたくなったと参戦し竿までそろえてきた。
AM10時に突然のセンサーON。
竿はわずかに揺れている。眺めていると上流に糸が走り出した。
竿を持ちアワセを入れると一気に走る。その力にアオだと思いヌマさんを起こした。
しかしその後はすんなり寄ってきて足元で少し抵抗したが数分で浮いてしまった。
良型の鯉だった(笑)
勘違いしたことが少し恥ずかしい(笑)
今回はこの後アタることなく終了。
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4月6日-4月7日
前々回の釣ったポイントの上流、対岸へ入る。
ドン深で手前はテトラ、石積みと条件はいい。
水深は5mほど。
しかし根が荒く、投げた後に仕掛けを動かすとほぼ100%に近い確率で根掛かりロストとなる。
7日の朝の打ち返し時も仕掛けの回収率は0%だった。
この時は沖でアオウオの抜けを数度確認。
あとはヌマさんに何かアタリがあったようだが乗らなかったとのこと。
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4月13日-4月14日
やはり釣れたポイントが気になってしまい再訪。
しかし今回は上流のテトラ帯とカーブが重なるところに入った。
ここも水深は約5mで根が荒く仕掛けの回収率は悪かった。
場所によっては思い切り投げると水深11mくらいにもなるような起伏に富んだポイントでかなり期待できると思った。
しかしながらアタリはない。無常にも何も起こらずに終了。
写真すらなし。
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4月20日-4月21日
前々回のドン深ポイントの少し上流側へ。
ここは川が流れ込んでおりかなり強い流れが出ている。
そして流れのおかげか魚の活性も高くひっきりなしにもじっている。
相変わらず抜けるアオは沖のほうで届かない。
ヌマさんの仕掛けのラインで抜けたこともあったが最後まで食うことは無かった。
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4月27日-4月28日
泣いても笑っても最終回。
予定的にもシーズン的にもやれるのは今回が最後。
今年のアオウオとの決着はここで着く。一本捕れたとはいえ、体調不良とアタリに気づかなかったことで不完全燃焼となっていた。
水温が一気に上がり、浅場への回遊もしやすくなっているはず。
全ての望みを賭けて一気に中流域まで上った。
今までより30kmほど上流へ。
水深は岸から7mほどは膝下程度、そこから一気に2.5mに落ちているガケのようなポイントである。アオ狙いの水深としてはかなり浅場になる。
セット完了ししばし休憩。
すると突然ヌマさんの仕掛けの上が爆発。120cmほどのアオが激しく水面に躍り出た。
そして時間を空けて数度繰り返す。
この行動は完全にコマセにアオがついている状況でいつアタリが来てもおかしくない状態である。
時々竿先を揺らすようなアタリがくるが、この日はアタリもなく翌朝を迎えた。
本当に最終日。
昨日の状況から今日も期待できると思い、コマセ撒きにも気合が入る。
AM8:00を回るころに竿がフワフワと揺れ出した。
去年と同じ状況、これは仕掛けの周りで魚がコマセを食べている水流や道糸に触れてでるアタリだ。
細かいアタリを繰り返すが中々仕掛けは食わないよう。
そして...
AM9:10
ついに竿が入りゆっくりと糸が出ていく。
すかさず思い切りアワセると竿を押さえつけられるような重量感に襲われた。
アワセた感触からフッキングがしっかり決まったことを感じ、
一度クラッチを切って竿を置き、ウェーダーを着る。
その間にも獲物はゆっくりと糸を出し沖に向かって泳ぎだしている。
まだ針に掛かっていることには気づいておらず僅かな違和感だけを感じているようだ。
慌ててウェーダーを履き竿を取り川の中を走る。
十分にブレイクを交わせる位置まできたところでファイト開始。
怒らせないようにじわじわと力を掛けてポンピングでじっくり寄せてくると獲物は素直に寄ってくる。
数分でブレイクまで寄せることが出来た
手前まできたところで今度は体力を消耗させるために一気に頭を上に向ける。
するととんでもない力で糸を出して走っていくのが腰を落としてひたすら耐える。
竿から伝わる首振りの感触からフッキングはしっかりいいところに掛かっている。
寄せては走らせを繰り返すこと5回ほど。
走る距離と首振りの強さから体力の消耗を感じ、ドラグを締めて頭を上に向かせると...浮いた!!
数回繰り返すと魚も空気を吸ってついに堪忍した。
浅瀬へ誘導し上からホールド、そして叫ぶ。
「獲ったー!!」
明らかに今年の1本目よりもデカい
ヌマさんにビニールシートを用意してもらい魚の下に入れてシートごと移動する。
145cmでした。
巨大な尾ビレ
重くて持ち上がらなかった。
145cm、重量は...40kgくらいはありそうな感じ。
尾の太い個体だった。
ファイト時間は12分弱。
写真撮影を済ませて速やかにリリースすると元気に帰っていった。
ほんとはもっと一緒に居たいし触れていたいけど元気なうちに帰ってもらわないとね。
これで私の今年のアオウオ釣りはなんとか有終の美を飾ることができた。
最後の最後に大逆転勝利である。
これにて大満足に終了!
のはずが、ドラマはまだ続く。
10時過ぎ。
未だ興奮冷めやらぬ中で一本だけタニシではなく別の餌を付けた竿がふわふわとアタリ始める。
しばらく見ていたが食いこまず、やはりこの餌は食わないのかと思った11時くらいに一気に糸が出る。
慌てて竿を取り合わせる。
しかしまさかの針外れである。
悔しいながらも満足していて去年ほど後悔はなかった。
それにあの大らかな性格の大魚はきっとまた餌を食べに戻ってくるはずと思ったからだ。
先ほどのバラシからアタリが止まり、やはりアワセてしまったのがまずかったのかと少し後悔がでてきた13時。
やっぱり帰ってきた!
同じ竿から一気に糸がでる。そして一度止まってゆっくりと走り出す。
落ち着いて竿を取りしっかりアワセを入れて川に入る。
ブレイクを交わしてテンションを掛けるとものすごい重量感、そしてズルズルと余裕で糸を引き出していく。
先ほどの魚よりもビッグサイズを確信してファイトに入るも寄せようとしても寄ってこず、逆にどんどん糸を出されていく。
なんとか寄せてくると今度は横に向かって泳ぎ出した。
自分仕掛け、ヌマさんの仕掛けを潜り、越えしながらなんとか魚についてゆく。
しかしいつまで経っても浮いてこないためじわじわとドラグを締めてプレッシャーをかける。
しばらく耐えていると流石に消耗したようで少しずつ浮いてきた。
数度潜って糸を出されるも頭の向きを制御してねじ伏せる。
ヒットから20分ほどでようやく水面に頭を出した。デカイ!
数回空気を吸わせると魚も白旗を上げて腹を見せた。
浅瀬に誘導しホールドしゲット!
長さは先ほどとあまり変わらないがとにかく太い。
引きの強さも体力も納得である。
手と比べてもこのサイズ!
重すぎ。
50kgあるかもしれない。
なんとか持ち上げた。
足に乗せるのが精いっぱい。
149cm重さは50kg前後と思われる。
昨年の自己記録を1cm更新である。この魚はサイズとか関係ないんだけどね。
この魚も元気にゆっくり帰っていった。
もうお腹いっぱいである。
ところが余韻に浸る間もなく、最後の1本の竿が揺れ始める。
そしてものの15分ほどで走り出す。
なんて日だ!!
去年に引き続き3本目のアオウオのヒットである!
撤収時間も近いため、ドラグは締めて最初から勝負に出る。
竿を持つと重量感はさほどなく元気に左右に走り回る。
小型と判断しガンガン寄せてくる。
力でねじ伏せて5分ほどでランディングしたのは127cmの元気なアオちゃんでした。
それでも十分デカいんですけどね。
写真撮影を終え、急いで逃がす。
そしてパンパンの腕で急いで荷物を片して撤収入った。
今年のアオウオ釣りはここで本当に終わった。
昨年、8年間のボウズ地獄から抜け出し、初めてのアオウオを手にした。
そして今年も4本のアオウオに会うことが出来た。
しかし何本釣っても本当に嬉しい。
そしてどの個体も堂々としていてかっこいい。
真っ黒な尾鰭、三角の背鰭、意外とかわいい顔、生態や、性格などどれをとってもとても魅力的で興味深い。
まだまだとてもじゃないがこの魚を理解できていないが、どれだけ釣れなくても私はこの魚に会うためにこの釣りは続けていくと思う。